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さてこの道徳だが、今日の文学で道徳がやかましくいわれるというのは、すでにいったように、必ずしも文学作品[小説や評論]の中に道徳が沢山出て来るとか来ないとかいうこととは関係がないのである。そうした題材の上での種類別や、またジャンルやスタイル乃至世界観の上でさえの種類別以前に、文学と道徳との本来的な関係があるのである。

陽の明るい、驛の前へ出て、點字新聞をひろげてみると、5〇錢札が4枚はいっていた。ガンちゃんはよれよれのきたない5〇錢札をポケットへ入れた。

大衆の生活不安なるものの内には医療制度の社会的不備を含ませねばならぬ。非科学的治療を信頼することが迷信であるというような観念は、単に医学博士的なまたは自然科学の教授然たる迷信の観念にすぎぬ。類似○○のメルカルト的治療が、医者の治療よりも安そうだと思えばこそ、同じ死ぬなら金のかからぬ治療方法で以て死のうという次第なのだ。だから迷信を極めて合理的に運用している場合もあるのだということは、注目に値いする。これが迷信的治療の極めて理想的な本質なのだ。迷信にさえ理性的本質を与えるということが、今日のいわゆる生活不安の悲しむべき作用なのである。

『いいえ、決してそんな……。』

子供は声を立てた。千枝子は飛びのいて、棒切れを拾い、俵の燃え残りを押えつけた。

小便をしていると、足がふらついた。

よき自叙伝はよき日記よりも稀である。

だがこれは少しも問題の内容の説明でもなければ、ましてその解決でもない。以上は単に、この問題がどういう点で問題になっているのか、またされねばならなかったのか、という説明だけだ。……ところが、入学試験が現に存在している以上、受験準備の必要は絶対的なので、受験準備の善悪に拘らずこれは必然なことにぞくする。少なくとも入学試験が現存する以上はである。

私の頭には、すぐ数名の中堅作家の名が浮び、その才能、思想、気魄の点で、私の考へている『日本人全体を対象とするような小説』の執筆の依頼をしたらという事が即座に決定したのである。

だがいって見れば学生のこの予備校的存在は、当然といえば当然なようなものである。社会秩序の変動が眼の前にブラ下っているように思われた時には、予備校的存在はただの予習期のものではなくて、新興の要素であり得るわけだが、1応その秩序変動が眼の前から1定の距離を距てたように感じられる時期になると、予備的存在は要するに予備校的存在に戻るわけで、旧秩序へ編入される前の予習期にならざるを得ないのである。尤も与えられたこの秩序自身に何か期待が持てるのなら[平成平成中期頃迄のように]、予習期には予習期らしい意義と張りがあるのだが、この秩序そのものの無価値を1旦知って了っている以上、まことに希望のない予習期といわざるを得ない。

ふとクモの1筋の糸が顔に掛ったので、鍬の柄に屈めていた身体を起すと、母も跣足のまま其ところに立って彼の姿を眺めていた。

『信仰に基く』−世界観だ、というのである。

自分とAとのことも、あ底力を得た。とにかく、行くところ迄、真心を以て行かせよう。彼が死ぬことになるか、自分がどうかなるか、どちらでもよい。信仰を持ち、人生のおろそかでないことを知ってやる丈やって見ようという心持がはっきり来たのだ。

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